この日だからこそ。
さて。
今日は、終戦記念日ですね。
ここ数ヶ月、ワタクシは、縁なのかどうなのか、戦争物ばかり見ていました。
そこで、今日、この日だからこそ…挙げたい作品が幾つかあります。
まず一つ目。
最近の話題作。
市川海老蔵さん、映画初主演。
「出口のない海」
出口のない海
もうすぐ公開です。
この作品は、「半落ち」などで有名なミステリー作家、横山秀夫さんが、最初コミックの原作用に書いたものを再構成し、小説化したものを原作としています。
小説の出来は、まだ読んでいないのですが、どうも評価は相半ばするようです。
作品は、海の特攻・「回天」という潜水艦の乗組員に志願する若者たちを描いています。
回天を描くものは、「人間魚雷 回天」と、「人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊」
などがありますが、基本的には、他の有名なものとは違い、それなりに知られていながらあまり扱われていないのが実情のようです。
実は。
最近、この時代のものを見るのが辛い。
昔だったら、よく分からなかったような人間の心の機微に、少しは敏感になったからでしょうか?
言葉では、中々今の自分の心情とか感覚を上手く言えないですね。
しかし。
ワタクシは、このような作品は、やはり見ておくべきだと思います。
前大戦の善悪がどうとか言う前に、昔、色々な思いを胸に死んでいった若者たちの事は、少しでも覚えている人がいても良いかと思います。
その人たちが望んでいた国であるかどうかはともかく、ワタクシたちが好き勝手に生きられる時代の礎になった人たちが居た事だけは、確かなのですから。
さてさて。
この作品の話をばらしてしまう部分もあるのですが。
この作品の主人公は、明治大学に入学し、野球部のエースだったのが、肩を壊し、それでも「魔球」に次の自分の夢を託していたけれど、時代の波が、彼を戦争に駆り立てていった…というお話になっています。
そして、海軍で、彼は「回天」乗り組みを「志願」します。
恋人役は、今をときめく、上野樹里さん。
彼女にも、自分の運命は伝えられない。
別れ際にやっと「好きだ」とだけ伝えて、特攻に向かう…
「ありがち」というストーリーといえば、そうなるかもしれない。
でも、この時代、若者たちにふりかかる悲劇は、ささやかで地道な生き方を壊す、こんなところにあったのですから。
だからこそ。
これが、映画だけのお話とばかり思える人も、いるかもしれない。
しかし、ワタクシにはそう思えない。
それは、完全に実話を元にした、こんな作品に出会っているからです。
その作品は、「消えた春―特攻に散った投手石丸進一」という小説でした。
作者は、牛島秀彦さん。石丸氏の従兄弟にあたる人です。
これを知ったのは、少年サンデーで、細野不二彦先生による漫画化された作品でした。
しかし、その時は、これが実話だということから引き込まれて読んだ記憶があります。
お話は、現・中日ドラゴンズに当たる球団のエースピッチャーだった、石丸進一さんが、特攻隊で戦死するまでのものです。
これも、映画になっています。
ワタクシも、BSで録画したものを保存しています。
人間の翼
石丸進一コレクション
なお、この映画が出来上がり、数年も経たず、牛島氏は逝去されています。
ストーリーとしては、両作品ともよく似ていると思います。
しかし、決定的に違う点が、一つあります。
それは。
石丸氏が特攻に行くよりも前に、彼の最愛の恋人は、空襲の爆風で叩きつけられ、亡くなっている事です。
「出口のない海」の主人公・並木は、家族や恋人が生きてくれる事を願いつつ、死にに行く事が許されたけれど、石丸氏は、心の中に大きな空洞を抱えたまま、死にに行く事になってしまった。
恋人の母上は、彼に死に様を伝え、遺品を渡して基地から帰り、その後行方不明になってしまう。
どんな気持ちだったでしょうね…
漫画では、主人公は、硬球を上官に投げ付け、飛び立ちます。
この小説・ルポを見ると、何故、細野さんがあんなシーンを入れたのか、共感できました。
この特攻について言えば、末期では、予科練や少年兵が本当に多く、士官学校出の高級士官が当てられた例は、ほぼ一つも無いそうです。
そして、彼らは、家畜以下の扱いだった、と言う事でした。
彼らは、「死ね!」と命じながら、基地近くの料亭でどんちゃん騒ぎ。そして、戦後、靖国神社に参って涙を流し、「辛かった」などと言っている…許せない!と、生き残った特攻兵が、取材で牛島さんに語っているんですね。
ワタクシが知る限り、高級士官で、兵を死なせたこと、戦争での責任を取り、後の国づくりを託して「特攻」で死んだというのは、宇垣纏中将くらいです。
宇垣纏
国がどうの、平和がどうのと言う前に。
彼らの思いをかみ締めることも、ワタクシたちには必要かもしれませんね。
「男たちのY○○○○○」は、ワタクシには、かっこつけすぎで、何を言いたかったのかちっとも分かりませんでした。
丸で、戦っているのがカッコいいとでも言いたいのか?とすら思えました。
つまり、戦うシーンが、「アクション」になってしまっている…
題材として難しいのも分からんではないが、ワタクシにはどうも、ね。
救いは、生き残った主人公が、本当に少年兵としての素直な気持ちが出ていたくらいでした。
「連合艦隊」と内容としては同じ筈なのに、この作品の監督と同じように、戦争、それも、海軍で指揮官で、多くの部下の死に遭っているという経験が無いからでしょうね。丸で想像だけでゲーム映像のように描いている。
角川さんよ。
やっぱ、アンタ、「大鑑巨砲主義」ならぬ、「大作主義」で、大きくぶち上げるのが好きなだけかもしれないねぇ。
by uneyama_shachyuu | 2006-08-15 20:21