営業という仕事。
先日、とある事情で、ある方とお話をしていたのだが。
言われた言葉が、こうだった。
「いや~!法律の仕事って、やっぱりカチッカチッ!とした『硬い』仕事で、融通の利かない仕事で、そこで働く人もそういう人ばかりだと思っていました。でも、あなたとお話をしていると、正に『営業職』と何も変わらないんですねぇ。営業、されていたんですか?ああ!そうですかあ~!それも納得いきますねぇ。」
…ちょっとちょっと、アナタ。
ワタクシも、法律職は硬く、融通利かせず…そうやって生きていくものだと思っていましたよ~(笑)。
ただし、大昔はの話ですけれど。
確かに。
手続き的なものでは、そりゃあ~もう~!融通の利かない『お役所』が絡んできますから、どうやったって画一的処理を強いられることも、多々あります。
それは、何と最高裁判事が掛け合っても話にならないなどというレベルなのです。
そういう意味では、
しかし。
しかし、だ。
法律なんてのは、ただの道具でしかない。
元々、人類誕生の時から存在したわけでもない。
勿論、ルールみたいなものは、猿の社会にだってあるけれども、人間の法律の持つ、冷徹な道具という性質は持っていない。
けれども、勘違いしないで欲しいのは、これ、最低限のルールという道具なんですよね。
だから、争いがあれば和解という、実に穏便な方法も出てくるわけで。
争いが尽きれば、仕方なく訴訟にもなる。
しかし、そこでもまた人間模様が存在する。
このように、強く人間が絡めば、その人が持っている強烈な『人間』そのものが出てくるしかないのです。
そこには、もうベッタベタの泥臭~い『営業』の世界が広がっているというのは、一般の方にはちょっと理解しがたいようです。
でも、人間相手の仕事は、表層は違っても、中身の方は、実は何一つ本質は変わらないのです。
A社の営業職は、生半可な営業では無かったです。
しかし、本当に良い経験でした。
それは。
本当に素晴らしいとお客様に思って頂ける営業になるには、『人間力』を高めなければならないということを教えてくれたからです。
で。
法律の仕事については、業界の内部にいる人間ですら、この営業の仕事とは区別して考え、そういった泥臭さ、人間臭さを必要としない仕事だ、と勘違いしている人も、実に多い。
でも、本当は、中身は、A社にいた頃の経験ばかりが生きている仕事だと言う事に、数日間で気か付きました。
…いくつも気が付いたけれど、簡単に言ったら…
例えば。
ある登記を急いでやって欲しい!と言われたとします。
しかし、それは、結構ややこしくて、役所内の手続のスピードが左右するから、かなり前から言ってもらわないと困るタイプの登記だったりする場合もある。
ここで、法律以外の世界出身の人は、時間がどうしてもかかるという事を相手にも気持ちよく納得して頂く努力を自然と惜しまないのですが、この業界で育った人は、そういう気遣いができる人がかなり少ないみたい。
冷たく、「いや、仕方ないので納得して下さいよ」と、半ば強引、半ば偉そうに言ったりするだけの人も多くいる事を知った。
でも、これなんか、言い方一つ。
相手を気遣って考えれば、自然と対応だって異なってくる。
確かに、こちらには何らの落ち度はないもの。
しかし、例えば…
「本店も移転されたとお聞きしましたけれど、立派なオフィスですねぇ!拝見してびっくりしました。お仕事も、好調のご様子で、お忙しそうですね~。ところで…ああ、それ程までにお急ぎなんですか…そうですね、ああ、役所への届けやお取引先(※こういう急ぎがかかる場合は、金融機関が絡む事が極端に多い)のこともありますから。そんなお急ぎのところ大変恐縮なのですが、この登記をされる場合、コレコレシカジカの理由がありまして、法務局内部での込み具合によって、どうしてもお時間がかかるのが通常なんです。ワタクシどもも、申請までは急ぐ事は出来ても、役所内部の事まではどうしてもタッチできませんので、この登記を依頼される場合、通常は、○○くらいのお時間を見て頂いているんです。お急ぎのところ真に申し訳ありませんが、その点だけはどうかご容赦下さいませ。勿論、登記完了まではつぶさに法務局と連絡をとりあって、出来上がり次第、確認した後、謄本等はすぐにお持ち致しますので、宜しくお願い致します。」
…これ、一方的に言っているようなセリフに見えるけれども、勿論会話しながらのものです(笑)。
この説明の時、相手側の事情をよく聞いて、相手の立場になって考えると、自分の口から出てくるセリフの印象が、全く異なったものになるのは言うまでもありません。
この時、事情を知ることによって、依頼人の状況が分かってくるから、当然その人たちのニーズが見えてくる訳です。
そして、何よりも大事なのは、話をしてもらえる体制になってもらう事ですね。
実は。
ワタクシ、A社に入るまで、この手の営業ノウハウが分からず、実際苦労しました。
特に、話して貰える体制になってもらえなかったのです。
で。
最初の頃は、見かねた上司がやってみせてくれて、その真似から入りました。
最初は、電話のアポだったな~。
で。
真似をしているうちに、自分独自のペースを掴みました。
その頃は、営業ができる人の本も読み、丸で砂に水が染み込むみたいにすーっと胸に落ちていく時期で、それも少しずつやっと自分のものにしていけたな、という時期でした。
最初は、本当にどうしようもなくて、困ったんですけれど、A社末期の時に、顧客をどんどん取れる時期が来て、その時に分かったのです。
どうやったら、人から話して貰えるのか、こちらの話を聞いて貰えるのか。
要は、自分なりの「話したくなるペース」をこちらから作り出せることが必要なんですね。
これを就職活動にも生かせたところもありました。
(※注;気に入って貰えたけれど、そこは罰当たりにも自分から断ってしまった(笑)。だって…営業する条件が悪かったんだもん!)
電話アポも、電話アポ専門の人からコツを教わったり、真似もしてみたりで、自分のペースを作り出した頃から面白くて仕方なくなったんですよね。
実際、アポの数も取れるようになってきた…頃に潰れたんですけどね(笑)。
自分流のコツの全てを書いていたら、眠る暇がなくなってしまうので(笑)、アレなんですけど。
ところがね。
たったこれだけのことも出来ないでいることに気が付かず、ワタクシから見ても「何それ?!」という事を平気でやって、依頼人を激怒させておきながら、「何故怒るんだ!許せない!」などと逆ギレする人も、いるんだな、これが(汗)。
業界の人全体に言えるとしたら、全体的に会話の印象が冷たい感じがする。
先ほどの会社の例では。
実は。
事務所へ着任数日後の状態でした。
しっかし。
依頼人の前で、バカみたいなミスばっかりやった時でした。
名前の字が旧字体であることに気が付かなかったりで、書類にアホみたいなミスをしたのです(涙)。
でも。
社長さんのお母さんにお話を聞いたり、社長のお話を聞いたりした時に、営業のペースが自然と出てしまい、事務所から出発する前に、教科書では数年前にサラッと勉強しただけの登記だったので、簡単に説明を受けておいた内容を丸で『よく知っているプロ』のフリして話していました(大笑)。
ワタクシの営業ペースは、上司、特に気に入って頂いたお客様から言われたけれど、どうやら雰囲気が落ち着いてホンワカしたものらしいので、こういう地位の方と話す時にはとても役立つのです。
知らない事でも、うる覚えでも、「プロ」の顔で、どっしりとした態度で、ゆったりお答えすると、とても納得度が高くなるのは分かっていたので、内心の不安を押し隠して、ゆったりお答えしたんです。
これは、依頼人の為でした。
「知らない」などと言っても、世間では通用しません。
喩え知らないとしても、すぐに先輩なり父なりに連絡して、その場で対応できれば、ワタクシ自身の人間性を信用してくれます。
とはいえ、どうしても分からないところが出てきました。
その時、あたふたせずに、A社時代、クレーム処理をしていた時を思い出し、対応したら、あまり問題にはならなかったようで、すぐに安心して頂きました。
親子で納得して頂き、会社の玄関までお見送りして頂いたりして…真に恐縮の限りでした(汗)。
結局、この業界も、人間の力そのものが試されていることに何らの違いがないんですね。
対応する力は、その場その場の一瞬の判断が必要で、それは正に「営業」そのものです。
そういう意味では、法律職だって、正に「営業職」と何も変わらないと思うようになりました。
冒頭の方の感想は、正しくその事なんですね。
by uneyama_shachyuu | 2006-09-11 22:19 | 司法書士編。