ああ、橋下弁護士。
さて。
うちの稼業は、司法書士。
司法書士の仕事内容は…一言で説明するのは難しいですが、登記が一番の
仕事と言えるでしょう。
また、昨今、司法改革の波に揉まれ、何時の間にやら簡易裁判所に関する
民事事件の代理権(『簡易裁判所代理権』と一般には言っている)の資格も得る
ことができるようになりました。
そんなことから、実際に民事裁判で訴訟代理人になることが、簡易裁判所に
限ってできるようになりました(※本当は、弁護士しかなれないのが
原則(弁護士代理の原則。民訴54Ⅰ))。
…まあ、簡易裁判所に限れば、別に弁護士でも司法書士でもなくても、
裁判所の許可を取れば誰でも訴訟代理人になれる(民訴54Ⅰ但書)ので、
簡易裁判所でサラ金事件の場合は、サラ金会社の社員が会社の訴訟代理人
になることも実に多い。故に、簡易裁判所は、「サラ金取り立て専門出張所」
の雰囲気も実は大きいのです(汗)。
うちの場合。
この簡易裁判所代理権も、大阪の第一期で取ってしまいました。
で、先日、うちの経営内容の現在を話し合った時の事。
折角、代理権資格を取ったのだから、訴訟業務は伸びているのか?という
話題になったのです。
…あまり、伸びていない様子(笑)。とはいえ、前よりは実務的に
相当な柱になりつつあるのも事実。
そんな訴訟業務が伸びない、と聞いた時、かの有名な橋下弁護士の
話になった。
橋下氏は、とある日テレの番組で(…分かるよなあ(笑))、こんな
発言をしている。
最低限月100万は弁護士として稼いでいる、と言われた時に、
「そんなん『出来ない弁護士』みたいぢゃないですかあ!」
と言い、また彼は、独立して、彼一人がいわゆる「ボス弁(※弁護士
事務所のトップ)」なのですが、その彼は、
「常時50~60件の訴訟を抱えている」
とも言っていました。また更に、彼の事務所スタッフ(これはワタクシの
想像だが、『いそ弁』を含めた数)が、「9人居ます」ということ
だった。
…実は。
ワタクシとジジイは、これだけの発言で、だ~いぶ彼の事務所の成り立ち
や経営内容が分かる(笑)。
というより、弁護士につながりがある「サムライ業(-士)」の人たち
は、かなり正確に分かるのではないか?
まず分かるのが、彼の収入源の一端。
これを聞いたジジイの一言。
ジ「そんなスタッフ居るなら、相当数の顧問先を持っとるで。」
うむ、納得、異議無し(笑)。
しかし、このコトバには、ワタクシたちには別の意味もあるのです。
まず、「顧問先」というものは、そもそもどんなものなんでしょう?
弁護士に顧問になって貰うというのは、実はあまり大して難しいこと
ではありません。
弁護士顧問契約を結び、顧問料さえ払えばよいのです。
別に、企業相手ばかりとは限りません。個人でも、この契約を締結
することが出来ます。
その契約内容は、弁護士の得意分野等の性質によっても異なるとは
思いますが、一般的には、広範囲の法律相談、及び経営相談が主たる
内容で、企業ならば社員の法律面での教育(コンプライアンス教育等)
を行って貰う場合もあります(※これはオプションで別料金というところも
あり。尚、出張料金や日当は別に払うのが一般的。)。
一般には、大体月額5万円からスタートします。
個人向けに、年額6万円にしているところも多くあると聞きますが、
月額5万を目安にスタートすると考えれば良いでしょう。
…でもね;;
この顧問料、切る企業が実に多くなったのよ(汗)。
勿論、全部の弁護士さんではない。
ワタクシの知り合いの弁護士さんたちも、どんどん顧問先を増やしている
くらいだから、勝ち負けが出ているんですけど、多くは年齢だな。後は、
弁護士法改正後には、大手弁護士法人に流れているということも聞くが、
理由はそれだけではない。
とにかく、今までくれたところから、闇雲に切られるケースも多い。
…不況だからね(汗)。
「うちは、要らんやん」と判断する企業は、当然そこから切るのです。
これは、何を意味するか?
彼らは、そもそも弁護士が活動する場面が、今まで殆ど想定できなかった
から、顧問料を「ムダ金」と判断できた。つまり、「使っていない」。
逆に言えば。
顧問料を切らない、払って雇う企業(個人)は、常時弁護士が必要と
考えているか、少なくとも活用しているということ。
つまり、「何らかのトラブルに遭い易い相手」
と言い換えることができるのです。
…かな~り語弊があるな;;
何も、橋下氏が乱暴な企業の顧問をしているというわけではありません。
そうではなく、弁護士が登場するのは、一番多いのが訴訟業務ですから、
その前に訴訟を防ぎ、最初にあらゆる法的問題を解決し、法令遵守性
(コンプライアンス)にやかましい世情に合致し、しかもちゃんと合法
かつ利益も出る、という危機管理面から、どうしても弁護士を必要と
している企業も、世の中沢山あるわけです。
また、仕事の面でも、契約書等の作成がより複雑なもので、よく行うという
企業も沢山ありますからね。
企業法務は、それこそ多岐にわたる訳です。
更に、弁護士事務所(又はその弁護士さん)には、専門性というのがあって、
「あそこは○○法が得意」などというのが少なからずあるものです。
昨今、M&A(企業合併・買収)の専門の渉外弁護士事務所なんてのも、
大流行で、ここの弁護士さんときたら、そりゃもう能力的に素晴らしい。
…まあ、そういう費用も経費としてみれる企業でもあるし、そういった
企業は、それだけ複雑な仕事内容をしているということになるわけで、
相当元気な企業ということができますね。
つまり、勝ち組みになりつつある元気な企業が、彼の顧問先に
多い、ということもできるでしょう。
事実、「ホリエモンのお蔭で、企業防衛の社内講習の依頼が顧問先から
殺到していて、もういい商売になっていますよ~(笑)」などと言って
いたぞ!!(笑)
日本の株式会社は、株式を自由に売買できない閉鎖会社が殆ど。
株式を公開している会社でないと、そんな講演はありえないですからね~。
それだけ、企業として社会的に認知されているところが多いのでしょう。
ジジイは、「それも、問題を起こす企業な(笑)。」と言っていましたが、
ある意味、正にその通りと言えると思います。
次に。
彼は、相当有能で、かつ、ある程度顧客満足度が高い弁護士だ、ということ。
もう一度、彼が抱えている訴訟数を見て下さい。
「『常時』50~60件」とある筈です。
これ、何を意味するか?
同じ司法試験を合格した、裁判官について考えてみます。
裁判官の成績を測る一つの基準として、受任件数と処理件数の差が
あると言われています。
裁判は、即日に終わるというのは、殆どありえません。小額訴訟くらいでは
ないのかな?
だから、判決はそれを出すのに熟した事件に出される訳で、担当してから
最低数ヶ月後となります。
つまり、今月は20件の訴訟を担当したが、判決を出すのに熟した事件は
20件終わらせもした、ということになると、処理能力が高いと判断する
らしいのです。
しかし、弁護士は、「依頼される」立場です。
下手ならば、即座に抱えている訴訟数は激減していくのです。
解任されたり、そうでなくても訴訟終了後に新たな依頼が無くなって
いくからです。
法律界は、実は相当な村社会。
弁護士の噂なんて、その業界であっという間に広まる傾向があるのです。
↑少なくとも大阪では(知り合いの弁護士達の異口同音・一致した説明)。
下手な弁護士だ、ということを依頼に来た人に他の弁護士は言いませんが、
ただ、相手方に付いたら、そりゃもう喜びます。
だって、「勝ったも同然」だからです←むか~しむかし、知り合いのとびきり
有能な弁護士さんがニコニコして言っとった(笑)。
橋下氏は、毎月依頼された訴訟の数も多いが、解決していく数も、きっと
多いのでしょう。それが判決なのか、それとも和解なのかは分かりません
が、少なくとも、処理していく内容は、それなりに依頼者が納得する
形に持って行っているのではないか、と想像しますね。
…彼の都合で、無理やり「説得」して終了している可能性も否定できんが(汗)。
そうでなければ、「常時」というのは難しいですよね。
だって、口コミって、結構大きいんですよ~。悪い噂は、変なところからも
入りやすいモンなんですよね。
…勿論、困った点もある。
弁護士が有能、という影には、相手方への攻撃が情け容赦無い
という面も多かれ少なかれあるのです。
これは、間違いないです。
特に最近の弁護士は、依頼者の為に相手方には非情に徹することを最初に
覚えるので。
一般の人は、自分が弁護士に攻撃されて、初めて弁護士がどういう人種か?
ということを思い知ると思います。
有能な弁護士は、それだけ恨みも買う仕事でもあるのです。
(※ワタクシにも、実はこの感情に覚えがあるのだ。)
きっと、橋下氏も、直接戦った相手方の中には、それなりに恨みというか反感を
持つ人もかなりいると思いますよ。
少なくとも、法廷やトラブルの現場では、テレビとはまた違った姿が見れることでしょう。
は~。
あのスケベの滑ったギャグも、彼のストレス発散なのかも(笑)。
by uneyama_shachyuu | 2005-05-03 21:45 | 法律