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本人訴訟は気をつけましょう。

概して、本人訴訟支援では、依頼人が最初に大体の方針を決め、法理論的につめているケースが目立つようになって来ました。

最近、大変面白い…失礼、興味深い案件が二件あり、一件は完全勝訴して判決が確定しました。



一件目。
基礎となる事情はあまり詳しくはいえないのですが、不動産明渡訴訟で、相手方にも司法書士がついたんですわ。

しかしね。

司法書士、それも、最近になって簡裁代理権を取ってやり始めた、あまり訴訟の案件数もない地方のセンセは、下手に訴訟実務はしないほうがええかもしれない、と感じた。

この案件。
もしも、ワタクシたちが相手方から依頼を受けたら、即刻、

「時効取得を争いましょう」

…という案件。
弁護士さんたちだって、まずこれを考える。
だって、時効取得=所有権を争おうと思えば十分争える案件だったんだもん。



…ところが。
相手方支援の司法書士は、どうアドバイスしたものか、使用貸借なんてものを持ち出してきた。

おそらく、想像ですが理由は簡単で、「登記が相手方に移ってしまっている=所有権はもうダメだ」と勝手に判断してくれたこと。





…ここですよ、司法書士の限界。

登記業務中心で法理論の実戦を知らない。

そして、登記の価値を絶対と信じている。





こちらは、原告(依頼人)もよく理解されていて、正に渡りに船。

裁判所にとっても「ああ、助かった。簡単な事件になった♪」という扱い。

だって。
裁判官は、第一回期日で相手方にこう宣言した。






「あのね、そんなに『使用貸借使用貸借~!』と主張するなら、当然契約書ぐらいあるでしょ?次回、そういうもので証明して下さいね。」







被告は全く意味が分からず、ポカーンとしていたそうです。

…勿論、裁判官も、そんな証明ができないことくらい知っている。

それくらい、使用貸借なんて、訴訟で安易に持ち出して主張するものではないものなのです。




相手方の依頼している司法書士は、事の重大性にやっと気がついたようですけど、既に敗色は決まった。

さすがに、裁判官がどのような心証を最初に持ってしまったかが分かったようです。



結局、この案件では、裁判官の判決が出しやすいように、親族その他から陳述書を提出し(相手方も出していたので、その事情説明の意味)、それに合う最高裁判決を指摘して、主張を展開しておいたのです。

※依頼人も凄い勉強家で、よく理解していたから、法廷でしっかり主張していましたよ。





裁判官は、こちらの出していたサインを勿論理解しておられて、和解を相手方が蹴った瞬間、結審してしまい、最終判断として、こちらの主張したものの通り判決を出してくれました。







教訓。

法理論もよう分からんのなら、弁護士をお勧めしなさい。







二件目。

これも、事情はあまり明らかにできませんが、共有物分割の事案。

それも、原告が、被告側が持っている持分を買い取るという全面的価格賠償を求める訴訟。

…あんまりないなあ、こういうの。

※最高裁は、平成8年10月31日に同じ論点の訴訟3件に対して判決を下し、これが認められることを明確に示している。

この場合、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる『特段の事情』を争うのですが、実質的には、

①共有に至った事情、②今までの使用状況と現状、③現物分割ができない、④分割で一人に持分が移動しても不公平でない、⑤原告が全面的価格賠償を求め、その支払いの能力がある

…という論点に絞られている感じがしました。


相手方は、元々金にうるさい人のようで(ただし、裁判所に出す書面には、ことごとく「金ではない」と主張しているが、全面的にただ金くれ!という内容だった(笑))、やっぱりね~、それででしょうねぇ、こういう人についたのが、どうやら訴訟ゴロみたいな法律『非』専門家。感覚的には、行政書士に多い書面でしたね。


というのはね。

これ、共有物分割訴訟でしょ?

だから、この訴訟で同時に争えるのは、共有者に対して共有に関する債権(民法259条1項)くらい。

これってね、例えば管理費だとか修理費だとか固定資産税だとか、こういうものの立て替え金のことなんですよね。

ところが。
裏についたヤツは、この意味を知らず、『訴訟になったら、それを通じてそれまでのことは何でも言える!』と判断して言いがかりをつけ続けた訳です。

何でも、不法行為が成立するだとか?その不法行為によって訴訟が提起されたから、損害が出たので賠償しろ!だとか?

本気で信じて書いていたみたい。

おそらく、素人相手に書いていたら勝ってしまい、こういう風に訴訟はやるもんだ、と思い込んでいる節があった。

何しろ、繰り返し繰り返し、紙面を割き、証拠らしきもの(??)を提出して主張し続けていましたからね?

…いい加減、こういうことをいい続けたら、裁判官もうんざりするわな?(笑)




その上。
価格の算定基準についても、こちらは最初から固定資産税評価証明などを含めたかり詳細な市場に関する査定書を出していたのですが、相手についた『非』専門家は、こう主張してきた。

「この共有物分割により、原告が不動産全体の所有権を得るのであるから、価格の算定は限定価格に拠るべきである。何しろ、FPの教科書にだって書いてあるぞ!

…あのねぇ。
この限定価格というのは、例えば、囲繞地(いにょうち。四方八方他人の土地で囲まれていて、行動に出るには他人の土地を通らなければならない土地の事)の所有者が、公道にに面した土地を得る、という場合、その土地も囲繞地もそれまで以上に価値が上がるなどという時に算定する方法なんですよね。


でもね…












…この不動産、マンションなんだよね(笑)。

こんな基準が出よう筈もない。

だから、こちらも、「ぢゃ、基準の計算式と金額、合理的に説明して主張してね♪」と書いておいた(笑)。







だから、最初に出廷した期日から、あまり聞いた事がない裁判官の態度だった。

裁判官は、原告に対しては、全く何も言わず、被告にばかり注意し続けたのです。


曰く。
「あのね、分割の請求があったら、もうね、競売か全面的価格賠償しかないんですよ?だから、※きちんと金額を主張して下さい。それとね?被告の主張はね?本件ではぜ~んぜん関係ないですからね?共有物の分割に関することだけ主張立証して下さいね?」

※相手方は、限定価格によるべきとして、算定を裁判所にしてもらおうではないか!と思っていた。民事訴訟の立証責任を知らぬアホである(笑)。


…子供への説教にしか見えない態度(笑)。

※内容的には、被告に限定した釈明権行使のオンパレードだった。


で、次の期日に弁論準備手続きが用意され、和解交渉。

それまでに、被告側は、簡易の査定書を数件出してきた。

こちらと変わらないものもあったけど、いい加減なものが多くて。

実際いい加減で、固定資産税評価証明書の基準の倍以上、とかね、今時あるかっちゅ~ねん!

それに、この物件に関しては、事によると価格が半値以下に落ちるかもしれない重大な事項があるのに、そこまで知恵が回らなかったみたい。

これについてもきちんと説明しておいた。

さらに、また不法行為がどうのとか、電車代がかかったやないかあ!とか訳の分からんことを主張し続けていました(笑)。


で、弁論準備手続きでは、裁判官は、普通に法律実務に携わる者なら引導渡されたと認識する発言をしていた。


「あのね、原告側はもうきちんと主張立証すべきことはしているので、価格の件はもう終わりにします。あ、それから、不法行為とか何とか言っているけど、これは共有物に関する債権としては大変疑義があるといわざるを得ないものだから、どうしてもというなら、○○日までにきちんと反訴を提起して下さい。そうでなければ結審しますからね?」


…普通なら、もう分かると思うんですけど、裁判官は、もう既に判決文が頭にある訳ですよ。それと、相手方のいう不法行為等に関していえば、実は、証拠が全くない、実にいい加減な言いがかりに過ぎないのは誰の目にも明らかだったので、裁判官としては、ようやらんやろ?とでも思っているのかもしれない。



多分、これも来月には判決ですが、内容もまた多分アレですね(笑)。






教訓。


本人訴訟を素人が食い物にしている場合があるので、自称『専門家』選択はご注意を。




…ところで。
オイ、訴訟ゴロ。






限定価格とやらはどこへ行ったんぢゃいボケ。

by uneyama_shachyuu | 2011-07-03 14:44 | 司法書士編。