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訴訟という「ゲーム」??

今、弁護士 灰島秀喜というドラマをやっていますね。

踊るレジェンドスペシャルプロジェクトと銘打って、4作品連続放送、という企画になっている。

…正直、裏番組の「終着駅シリーズ」の方がずっと面白いようにも思えるが(笑)。

こちらフジテレビ / News


さて。
このドラマで、よく聞くセリフが出ていた。

曰く。

「訴訟はゲーム。法律はルール。ゲームには”ルール”がある。弁護士の仕事は、ルールの範囲内で訴訟に勝つ事。法律家を雇った以上、修羅場は覚悟して下さい。」

…なるほど。
ご尤も。

え?
そんなこと、納得しないでほしい、と思います?


でもねぇ、ホンマのことやと思うんですよ。


実際、訴訟がおきたとして、本人訴訟、それも当事者双方が、となると、訴訟は進まない。

それは、何故か?

簡単に言えば、法律論など出てこないし、感情が先に立ち、法廷で必要な主張がまるで出来ないから。


こちらが内容証明郵便を送り、何らかの請求をしたとします。

で。
相手が、全くの素人なのに、その内容証明郵便を真似て送り返してくるという事があります。

それが、本人だったら…

読めたもんじゃありません(汗)。

法的に見て、一体、何を主張したいのか、仮にそれらしきものが書いてあったとしても、何を根拠にして言っているのか、さっぱり分からないからです。

これ、実は、困った事になるのは本人だけなんですよね。

というのも…
「訴訟は、『法律』というルール上で戦うゲーム」なので、法律上、全く役に立たない情報や主張は、単なる『ファール』でしかないことから、訴訟では通用しないからです。




皆さん。
法律家って、どんなイメージなんでしょうか?

正義の味方?
金の亡者?(※つまり儲かっている?)
はたまた、エリート?

確かに、金はともかく、一面的にはどれもそういうところがあるとも言える。
何も、弁護士だけじゃないけれど、ね。


ですが。
最近のワタクシには、こう見える。

思考と行動に偏りの傾向がある人種。



うちの先輩の先生と、こんな話になった。

ある不動産取引でのお話。
相手方に弁護士が付いてきた。
しかし、この弁護士が、とっっっっっっっっても、おかしい…というか、めちゃめちゃ怪しい(汗)。

丁度、最近テレビに出てくる、おかっぱアタマのオタク弁護士と、雰囲気が酷似しているとのこと。

しかし、この弁護士。
勝手に何でも自分で決める。

相手方にとって、有利な条件を契約書に盛り込もうとしても、法律的に意味の無い事例まで持ち出して、勝手に断る。

先輩の先生は、非常に訝しみつつ、こう話しました。

「何であんな先生に頼んだんでしょ?」
…というより、どうして弁護士になれたんだ?との事でした。



ワタクシ、目に浮かぶようで、笑い転げていました(笑)。

しかし、しかしですよ、先輩。
それは、違うんですよ。

ワタクシも、元は司法試験組。
受験予備校のクラスルームが、どんなものだったか?をよく存じ上げております。

だから、その理由がよく分かる。

皆さんは、どう思われるか、分かりませんが、昔の司法試験受験生って、正直、表面的にも人間の内容的にもおかしい人、表面的にも人格的にも普通だが、思考その他に個性や癖がある人が、極めて多いんですよね。

…勿論、ワタクシを含めて、例外なく、ね(笑)。

で、見ただけで「アキバの住人と変わらない人種」も多々いるのが現実だったりしたものです。




え~。
アキバ系も含めて。
皆さん、アタマは、確かに良かった。
でも、あらゆる意味で、思考がドライになりがち。
たとえ、人権派の意見を持っていても、です。

それは、思考において、どうしても制約があるからです。

つまりは、良くも悪くも法的思考と言うヤツです。
これは、弁護士という人種の人格的出発点にもなってしまうのです。




ワタクシは、先輩の先生に、「先生も、あの受験生のクラスで勉強すれば、『どんなヤツがいるか?』がよ~~~~く分かります!アキバ系ってご存知ですよね?ああいうのが、混ざっている確率が、実社会よりはかな~り高くて…」というお話をしていました。

…彼女のお返事は、実に明快。

「ちっっっっっっとも分かりたくない世界です!」

…ご尤も(笑)。

そして、加えてあるお話をしました。

数年前、名古屋高検の検事長が、万引きをしてとっ捕まったという事件がありました。

勿論、事実上のクビになったと思います。

さて。
その当時の、ワタクシたち司法試験受験生の反応。

これは、ほとんど一つだけに集約される。

それは。
「司法試験に合格したのに、勿体無い!それに、こいつ、高検の検事長やろ?!バカやんけ!こんなつまらん『犯罪者』になりおって!」

大体、こんなものだったと思います。


しかし。
弁護士の先生たちの、当時の感想は、図らずも一致していました。

曰く。
「ワタシら、こう思いましたもん。『辛かったんやね~。疲れたよね~』って(しみじみ)。」


…。
これ、どういう意味か、お分かりだろうか?
ワタクシも、聞いてみて、なるほど!と膝を打った。





先ほどの、弁護士の人格的出発点と申し上げました。

実は、ここに戻るんですね。

彼らは、実にドライな思考方法を身に付けます。
それが原因で、一般人には全く分からないコミュニケーションの取り方をします。

つまり。
弁護士は、『人の話は、聞かない』。

この一点に尽きる。


皆さんも、困って相談に行かれれば、よくお分かりになる。
つまり、ですね?

弁護士は、自分が判断する材料としての情報として、必要な事かどうか?を判断し、それが意味の無い事と判断すると、相談者が一生懸命話そうとしても、そういう部分は一切聞かないのです。

多かれ少なかれ…ではなく、表面的に現れる形はどうあれ、ほぼ全員と言っていいほど、話は聞きません。

これは、弁護士にとって、『余計な』話は聞かないと言うことなのです。

誤解せず、注意して聞いて頂きたいんですが、これは、弁護士と依頼人が話してみて、特に感じる感覚のお話です。

弁護士としては、話は聞いているつもりですけど…


一つは、法的思考とは、感情論を極力削ぎ落とした、『理性』の術策になっている事が原因です。

勿論、法的思考といっても、一般人の感情を無視している訳ではなく、一般人を基準とした、『社会通念的な感情』は考慮しますが、具体的感情論は、極力思考から排除する訓練をしてしまうのです。

でなければ、理性を基準とした法律論、理論的な思考が出来なくなるからです。

そこには、常識的な感情は排除されている訳では、勿論ありませんが、個人の具体的な感情は、弁護士の脳が本能的に忌避すると思います。

これが、「弁護士は、冷たい」と思われる、最大の原因ではないかな?

愚痴の一つも聞かない。
…あくまで、これらは全て依頼人側から見た風景であり、感覚です。



まあ、確かに、依頼人にも問題がある。

「せんせい!ちょっと聞いて下さいよ~!あの人(※問題になっている相手方)ったらね~!も~!日頃こんな事言うんですよ~!うんたらかんたら
!ごみの日だって、こんな事言われて!うじゃくじゃ!でね?あの人ったら!こう言ったら『あんな事』を言い触らすんですよ!もう!腹が立つ!ぺちゃくちゃぺちゃくちゃぺちゃくちゃぺちゃくちゃ…」


…特に、おばさん相手だと、こういう危険性は極めて高い(大笑)。

しかし、常識的に考えて、これがまともに役立つ情報か?は、誰にでもお分かりになるかと存じますが、実際、役に立たないことが極めて多い。

事実、相手方にお会いしてみて、「何や!こっちの人の方が、ずっと話が分かるやんけ(涙)」なんてことも、ままあったりする(笑)。




しかし、こういう事が、何で起きているのか?という深い根っこというものについて考えるときは、こういう情報は、実はとても役に立つ。




そうです。
もう一つの原因は、人間としての修行不足…社会人経験の不足なんです。

これ、本当に大きい。

とはいえ、市民感情が多かれ少なかれ欠落した先生が、大変多いと感じるときが出てきたのは、ワタクシの場合、実は、A社の営業をして人間観察の癖がついてから。

ワタクシも、彼らの思考パターンでしたからね。同じ訓練をしたんですから(笑)。


特に、女性は、問題点と感情的不満が、脳内では同一の地平線に平等に横たわっているらしく、区別して判断が付かないという人も、かなりいるのは事実。

しかし、そういう話も全て聞いてあげて、しかも、落ち着いてきたときに話すと、驚くほど割り切りよく話を理解し、決断できるのも、また女性の特質のような気がする。

男性の場合、理論的にも理解は早いかもしれないが、相手方の反論まで勝手に想像して、「大丈夫だろうか?反対されて困るのではないか?」などと、まだ起こってもいない危機を考え込んでしまい、心配する人も、かなりいる。


こういう人間性の観察こそが、実は最も基本的で、最初から継続して、し続けなければならないという事をアタマで理解してはいるが、人間だから機械のように割り切れないということを知らない人も、弁護士にかなりいるような気がする。

いえ、ホンマの事で、依頼人を見誤り、自爆する弁護士が、かなりいるんですよね。

…勿論、経験を積み、人格的にも錬れてくると、こういう事も理解して、丸で狸か狐か?と思うほど老獪な人物になっている先生も、確かにいらっしゃる(笑)。




これね、勘違いされては困るので。
若い弁護士さんにこういう人が多いから、言っているんですよね。

実際、そういう弁護士から断られ続け、ワタクシたちの事務所においでになり、依頼を受けた事件の中には、あっ!と言う間に片付いてしまった事件なんてものも、それなりの数が存在し、「断っていた弁護士達も、ホンマにバカやな~!こういう小さい事件も、ちゃんとしていかないと、『営業』にならんのに」と毎回思うことがあるのです。

若い弁護士さんほど、仕事の数が少ないので、あまりお金にならないと勝手に判断してしまい、よく話を聞かないうちに、相談料だけとって追い返してしまう、という事が起きているようです。

大馬鹿者です。

口コミの恐ろしさを知らない。
そして、それを味方に付けたときの力も。

営業力が無い、と言い換えても良いかも。

勿論、失敗もあるんですけどね(笑)。




先ほどの高検の検事長のお話ですが。

実は…

検事と刑事ほど、人の話を聞く人種はいないのです。

前にもお話ししましたが、刑事事件は、犯人(被疑者・被告人)の人間性まで問題にするので、犯罪者の話をよ~~~~~~~く聞く仕事…なのだそうです。

確かに、ワタクシも何人かその筋の方とお話をしてみると、そういうところが多いと感じる。


だから…


ストレスが半端ではないのでしょう。



裁判官は、弁護士以上に人の話は聞かない人種だそうですが、だからこそストレスは溜まりにくいらしい。

確かに、外でおおっぴらに飲み歩くなどは出来ないそうです。
しかし、こういう違いがある。

検事たちも、裁判官同様、外で飲み歩いたりは、あまり出来ない。
ワタクシの知り合いの弁護士達は、大阪の新地で飲み歩いて騒ぐなんてこともできるけれど、検事たちは、精神的に逃げどころが無い、と聞きました。

なるほど。
万引きでもしてやりたくなる、というところも、実際あったのかもしれないですね。





さてさて。
では、人の話をよく聞く…と思われる人権派弁護士は?
人権派という人も、危うい危うい(大汗)。

何故なら、こういう人は、必ずと言って良いほど、政府・権力機構は全て敵だし、もしも判例その他の訴訟事例を勉強する機会があったら、どちらかへの肩入れが度が過ぎる傾向があるからです。

こういう人は、依頼人以外、全て敵と看做して、あらゆる存在に攻撃し、依頼人にまで要らぬ敵を作ってしまう。

それに、こういう人は、実は、依頼人の話もあまり聞いていないし、先入観が大きく、自分の考えしか信用していない。


要は、バランス感覚なんですよね。

最近、そういう弁護士は少なくなった、と思いますが、依頼人の話を聞いて、こちらの話を聞きたいと言う弁護士も、昔はそれなりの数が存在したんですが、最近は、あまり話を聞かず、勝手な判断をして、ただただ攻撃し、こちらの仕掛けた罠にかかって自滅する弁護士も、昔に比べてかなり増えたような気がする。




最初の「訴訟はゲーム。法律家を雇った以上、修羅場は覚悟!」という話ですが。

確かに、依頼人にも、ちゃんと覚悟して任せる事が要求されます。


こんな事件がありました。
これは、うちの知り合いの弁護士さんとの仕事でしたが。

ある土地の所有権を争っていました。
それは、確かに依頼人の数世代前からの所有している土地。

しかし。
あることがきっかけで、登記が違う人のものになってしまった。

これについては、法的に原因があるかどうかが不明な感じがする。



こういう時、どんな弁護士だって、まずは所有権そのものを主張し、仮定的抗弁として、『仮に認められない場合でも、既に時効取得している』と主張する筈であります。


実際、これでホンマに簡単に勝てる事例だった。


しかし、依頼人は、何を思ったか、「自分の土地を何で『時効取得』なんて主張せなあかんのぢゃ!ボケ!」といって聞かない爺さんで、弁護士さんも我々もお手上げ。

結果、先祖伝来の不動産全てを失うという結末に終わった。



ね?
「訴訟は、法律というルールのあるゲーム」という意味、お分かりになったでしょう?

確かに、感情的には、爺さんの言った通りです。

「え?最初から自分のものなのに、『時効取得』??丸で、他人のものを自分が勝手に奪ったみたいやん!」と。

しかし、訴訟で勝つのは法律というルール上で認められる手段全てなんですよね。

だから、この場合、弁護士の思考と判断が、法律上は正しい。


ということで、感情を抜きにして任せられる弁護士を探して下さい(笑)。

by uneyama_shachyuu | 2006-10-28 22:17 | 司法書士編。