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代理人もつらいよ(涙)

松坂選手の契約の事で、日本は揺れていた…かな??(笑)
結局、彼のために120億円も動く事になってしまったのかあ!

今、メジャー・リーグは、バブル期に入った、という方も色々といらっしゃるようですね。

今回、とても話題になったのは、”吸血鬼”とまで謳われた(褒めてどうする(笑))スコットボラス氏の存在ですね。

いわゆるスポーツ・エージェントです。

メジャー・リーグに限らず、アメリカでは、スポーツ選手と競技団体…殆どが”球団”とでも訳せる競技ばかりですが、この年俸その他の交渉には、「代理人」と言われる人たちが、間に立ちます。

メジャー・リーグの代理人…
儲かってまんなあ~!(笑)

このメジャー・リーグ傘下の選手(メジャー傘下のマイナー・リーグ選手も含む)の代理人になるには、どうすれば良いのでしょう?

答え。
メジャー・リーグの選手会(MLBPA)の厳しい審査に合格する事で、メジャー傘下の公的な代理人になれることになっています。
この資格を取得していないと、球団側も相手にしません。


代理人かあ…
ワタクシどもの業務も、はっきり代理人です。
人事ではありません。

今回は、代理人一般のことについて、ちょっとだけ述べたいと思います。



そもそも、代理制度って、なんで存在するんでしょうか?
この代理制度の趣旨とは、「私的自治の拡張と補充」と言われています。

※一般的な日本の民法の理解。但し、大陸法(フランス・ドイツなど。日本の民法はフランス、商法はドイツからの輸入が元だと聞いています)でも英米法(文字通りイギリス・アメリカ)でも、この考え方が基本で、輸入した側の日本と変わらないので、このままお話しをさせて頂きます。

皆さんは、この法律社会の中で、実は、知らず知らずのうちに毎日法律行為を行っています。
法律行為とは、人が何らかの法律効果を欲し、その意思を表示する事により、法律上の効果を得られる行為…ちょっと語弊はあるかも知れませんが、大体こんな事です。

法律行為の中で、一番有名で数が多いのは、何と言っても契約でしょう。
以下、法律行為という言葉が出てきたら、契約を思い浮かべて頂ければ結構です。

さて。
法律行為と聞くと、何だか難しそうに思えるかもしれません。
しかし、実は、そこかしこで毎日自然と行われているんですね。

店先で、みかんを買っていらしたアナタ!
既に、「売買契約」を締結・即時にお互いが履行しているでしょう?

毎日定期券で電車に乗って出勤しているアナタ!
「旅客運送契約」を一定期間締結し、毎日履行してもらっている訳ですね。

このように、人は、自分自身で、このような法律上の行為…契約などを数知れず行う訳です。

そして。
資本主義の法律社会では、強行法規(※個人の意思ではその法的効果を排除できない法規)に反しない限り、私法上(※一般社会の個人間を規律する法律。国家と個人を規律するものは公法)の法律行為の内容を個人の意思によって自由に決定できる原則が採られています。

これが、私的自治の原則と言われるものです。
この中でも、一番重要な契約に絞り、契約自由の原則という原則が派生します。

ですから、本来は、このような法律行為について、個人が、自分自身で内容を決定し、自分自身で行うのが原則的な姿である、と言えましょう。

ところが。
人は、体か一つしかありません。
例えば、契約の締結に行こうとしているとしましょう。
しかし、同時刻に別の仕事が入っている…なんてこともありますよね。

そこで!
誰かに権限を与え、契約を代わりに締結してもらい、その効果を自分が受けるという構造が必要になってきます。

これが、代理です。

特に、これは、私的自治の拡張(自分の行動範囲を広げ、広く法的効果を得られるようにする事)という点で、必要になっていると言えます。

他方。
契約するのに自分が出向いてもぜんぜん構わないが、契約内容を決めるだけの専門的知識が無い(涙)…ということがあります。

こういう時は、専門的知識を持った人に権限を与え、自分に有利な点を契約に盛り込んでもらい、良い契約を代わりに結んでもらうというチエが必要ですね。

これも、代理です。

これは、私的自治の補充(代理人によって、より確実な法的効果を得られる事)の点で有利さが目立ちます。


さてさて。
ワタクシたちの仕事は、このどちらの点でも必要とされていますが、後者により大きな比重がかかっているという事が出来ると思います。
弁護士さんや司法書士さん、税理士さん、その他の士業は、みんな後者の「私的自治の補充」の面の方が、より重要ではないかと思います。

それこそ、前者だけだったら、「使者」(権限は無く、ただ本人の意思を伝達するためだけの存在の事)を使えば良いだけのことだからです。

ですから。
ワタクシたちの仕事では、権限の内容を明確にする委任状を最初に貰うことから始まる訳です。



さてさて。
今回のメジャー・リーグの代理人の場合。

実は、私的自治の拡張・補充、両面において欠かせない存在なんですよね。

というのも、スポーツ選手の場合、一流であればあるほど、常に厳しくトレーニングする訳ですし、ゲームを多くこなしていく事が求められるので、その時間の貴重さは、本当に重要だからです。また、移動量も半端で無い場合が多々あるので、「手足が伸びきっても契約場所には行けない」という事態も多い筈です。また、この手の契約は、専門性が極めて高く、交渉術にも長けていないと話しにならないのですから、その専門家に任せる方が、本人にとっても有利な契約が結べることになるのです。

特に、アメリカの場合、はっきり言えば、日本人が思っているよりも、契約も法的規制(※特にビザの関係)なども、本当に難しい。

メジャーの代理人の場合、かなりの割合で、弁護士資格を持っている代理人が多いと聞いています。

なるほど、と頷ける話です。




でも。
日本でもそうですが。
優秀な代理人は、報酬も高いと思って結構です。
実際、自信を持って高く請求できるのも、その力を買ってくれる人が多いからこそです。

メジャー・リーグの場合は、報酬の5%というのが、選手会との取り決めとして定められているそうです。

しかし、先ほども言ったように、優秀な人は、平気で高額を要求します。
ボラスの場合、6%ないし300万ドルが最低ラインらしい。

今回、最後の最後に揉めたのは、この報酬分をどう含めるか?も、大きな問題点になったからだと言われているそうです。

…ふ~。

まあ、こんな人ばかりではなく、あのカル・リプケン(Jr.)の代理人を務めたロナルド ・シャパイロ氏などは、どこのメジャー球団も一緒に仕事をしたい!と言うほどの人で、球団、選手、そして球界全体を考えた契約交渉やそのほかの活動をなさっていた、と聞いた事があります。

でも、それが目立つと言うのは、そういう人は、余りにも少ないということではないかしら??(汗)



とはいえ、アメリカの代理人の場合、大変です。
というのは、代理人契約の内容は、大変広く、それだけに義務も多いのです。

はっきり言えば、一年中、クライアント(選手)の生活を保護するくらいの義務(※様々なマネージメント業務も含む)を負っています。
当然、球団側からの苦情も受け、選手としての能力向上にまで口を挟まなければならないという事も含まれているそうです。

これは、骨が折れるぜ(汗)。

何しろ、手のかかる選手だったら一年中振り回してくれるんですからね(笑)。

※これだけではない。この他にもアメリカの代理人には苦悩がある。
というのも、これはプロスポーツに関わらず、全般的な国民性として存在しているのが、「訴訟マニア」という点。アメリカ人には、「何でもかんでも訴訟にして自分に有利に持っていくことが大好き」という人物が、かなりの数で存在している。ずっと前にもワタクシが書いた事があるが、本来、依頼人は「味方」のように感じる人も多いと思うが、実際は逆。「最大の敵」という場合すら多々ある。アメリカでもこれは同じで、有名代理人となっても、クライアントに背中から不意に襲われるような訴訟を起こされ、くたびれ損に持っていかれる場合すらある。一流選手の中にも、有能でしかも金にうるさい弁護士を雇い、場合によっては球団も代理人も訴えるという「訴訟マニア」みたいな人種は、確かにある程度存在しているようだ。それもこれも、アメリカが訴訟社会であるということ、そして、何より弁護士(大手法人も数も含む)の数も滅茶苦茶多く、どこでも訴訟を起こすために弁護士を雇えるという社会構造であること、などなど。代理人の世界も、良いように見えて、実は怖い点もある、ということだろう。



では、日本のプロ野球界は、どうでしょうか?

まず、選手会に登録された弁護士に資格が限られています。

日本プロ野球選手会公式ホームページ

また、報酬も、アメリカとは桁違い。年収の1~2%程度、又は最高100万円までと決められています。
これは、アメリカとは違い、契約交渉と契約締結のみの委任契約と考えられているからです。

「日本プロ野球選手会・選手代理人報酬ガイドライン」(pdfファイル)


…とにかく。
日本では、まだまだ代理人というと、弁護士ですら胡散臭ぇ商売と、どこか思われているみたいで、その他の士業も、多かれ少なかれ、国民からはそう思われているようなきがしてなりませんねぇ(涙)。

確かに、「え…コイツを信用して雇ったの??(汗)」という人も…存在するのは否めませんが(笑)。


心して、自分の人格も能力も磨きたいものです。



と言う訳で。

何か困った事があれば、いつでも当事務所へご相談下さい。
メールは←自己紹介にありますから、気軽にどうぞ!
(※なるべく関西地方の方ね(笑))

by uneyama_shachyuu | 2006-12-20 20:39 | 時事