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何ゆえ「不起訴」?「起訴猶予」?

さて。
今回は、珍しく真面目(??)…かな?(笑)

ちょっと世間を賑わせた事件ですね。

堀病院前院長ら起訴猶予 無資格助産
2月2日8時0分配信 産経新聞

 年間約3000人が出産する日本有数の産婦人科「堀病院」(横浜市瀬谷区)による無資格助産事件で、横浜地検は1日、保健師助産師看護師法違反(助産行為の制限)容疑で書類送検された堀健一前院長(79)と看護師や准看護師ら計11人を起訴猶予処分とした。

 堀前院長らは無資格助産の違法性について認識していたが、横浜地検は起訴を見送った理由について「看護師らの内診は助産師の偏在など構造的問題であり、前院長らを刑事処分して一般予防するのは相当ではない」と判断。さらに(1)無資格内診による胎児や母体への危険性が認められない(2)厚生労働省や医会が改善に向けた施策を進めている(3)堀前院長は社会的制裁を受けて院長職を退き、医師資格も返上するとしている-などを処分理由に挙げた。

 同病院をめぐっては、神奈川県警が昨年8月に家宅捜索。厚労省が過去2度、「看護師の内診は違法」とした通達を出していたのを根拠に書類送検に踏み切ったが、日本産婦人科医会などが家宅捜索直後から、「看護師の内診が認められないなら産科医療は崩壊する」などと県警の捜査を批判していた。

 起訴猶予処分を受け、堀病院代理人の小西貞行弁護士は「強制捜査後は内診行為はすべて医師・助産師が取り扱っており、安全な医療、出産に全力を注いでいる」とのコメントを出した。

最終更新:2月2日8時0分



無資格助産事件、院長ら不起訴へ 横浜地検、影響考慮か
2007年2月1日(木)03:14 朝日新聞

 年間約3000人が出産する堀病院(横浜市)の無資格助産事件で、横浜地検は31日までに、保健師助産師看護師法違反(助産行為の制限)の疑いで書類送検された堀健一院長(79)を不起訴処分(起訴猶予)とする方針を固めた模様だ。起訴して刑事責任を問えば、産科医や助産師の不足が深刻なお産の現場に与える影響が大きいことや、また堀院長が地検側に院長職を辞する考えを伝えたことなどを踏まえ、総合的に判断したとみられる。

 書類送検されていたのは、堀院長のほか看護師、准看護師ら10人。神奈川県警が昨年8月、同法違反容疑で病院を家宅捜索し、看護師らが妊婦17人に対して子宮口の開き具合をみる内診行為をしたとして同法違反の疑いが持たれていた。看護師らも不起訴処分とするとみられている。

 同法第30条は「助産師でないものは助産をしてはならない」と定めているが、どのような行為が「助産」に当たるのかは明記していない。厚生労働省は02年11月、都道府県への通知の中で、内診が医師や助産師しかできない助産行為に含まれると定義。さらに04年9月の通知では、医師の指示があっても看護師は内診をしてはならないとの見解を示していた。

 これに対し、事件後、日本産婦人科医会などは「医師の指示があれば、看護師の内診は助産行為にあたらない」と主張。「看護師による内診を認めなければ、お産が立ちゆかなくなり、お産難民があふれる」と一連の捜査に反発していた。

 地検は産科医団体への事情聴取を重ね、処分内容を判断するにあたってお産の現場の厳しい現状を重視したとみられる。

 さらに、地検の事情聴取などに対し、「内診は助産行為ではない」などと犯意を否認していた堀院長が、今年になって引退の意向を検察側に伝えたという。地検側も職を辞することを重く受けとめ、嫌疑はあっても訴追しない起訴猶予の判断をしたとみられている。

 これまでの無資格助産をめぐる検察の判断では、准看護師に内診をさせたとして千葉県茂原市の産婦人科院長が04年2月、同法違反で千葉地検に略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受けた。だが、同法違反で書類送検された愛知県豊橋市内の産科医らに対し、名古屋地検豊橋支部は06年11月、「犯意が希薄なうえ、内診行為そのものによる健康被害の危険性が認められない」と起訴猶予とした。



今回は、特に産婦人科の問題については触れません。

とまれ、ワタクシたちの国は、医師不足、産婦人科問題、看護士問題…と問題山積であり、今回の民事・刑事両面で頑張っている人たちには、国民の一員として、意識を深める努力を怠らないようにしましょう。

無関心でないことが、まずは大切ですね。



さて。
今回触れたいのは、不起訴処分という言葉なんですよ。

それにしても…

今回も思ったのは、朝日新聞って意見も内容もいい加減だなあという事です。

論説のバカバカしさについては、触れるのは止めます。
毒舌の嵐になるからね(笑)。

とにかく、誤解を招かないように書いて欲しいなあ。

不起訴処分は、実は「起訴は見送る」と決定した検察官の処分一般を指す広義の言葉なので、その裁定主文こそが大事なのです。

何故なら、起訴に至らない理由が重要だからです。

不起訴とは、犯罪不成立が判明した、または嫌疑不十分(証拠が不十分)な場合に検察官が下す裁定(※この意味で狭義の不起訴とも言える)ですし、起訴猶予とは、嫌疑が十分あっても,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状,犯罪後の情況といった諸般の事情に照らして,あえて起訴する必要はないと検察官が考える場合に下す裁定ですから、その処分の意味は、正反対とも言える程に違ってきます。

この違いは、前者は『無罪判定』に近づき、後者は『犯罪成立』を前提としているという大きな違いがあるのです。

このような意味の違いを知れば、軽々しく「不起訴処分」という言葉を連発しない筈です。

事実、朝日新聞以外は、ほぼ全ての報道機関は、「起訴猶予」という言葉の使用のみで統一しています。


何故か?

今回の問題で言えば、医学会は、「無罪として扱え!」(※犯罪は『不成立』)だと主張していたところ、検察の扱いは、「犯罪の構成要件には該当するのは見逃せない。しかし、これは、行政側の不手際によって違法状態に至らざるを得ない状態に置かれた事から、あえて起訴しない事にした」ということであり、あくまで彼らを犯罪者という扱いをしていたことになるのです。

この違いは、当然大きく、問題の深さが浮き彫りになる重要な点なのは、誰が見ても明らかなのです。

起訴を見送る…と聞けば、この点にすぐに思いを致すのは、殆ど反射的な論理です。

朝日新聞は、この点について配慮が足りないと言うべきでしたね。
そこまで考えていなかったとすら感じました。



さてさて。
この「不起訴」と「起訴猶予」との違いを考える時、検察官は、どのような基準で使い分けているのか?という点、気になりませんか?

確かに、上記のような定義では、証拠の有無と諸般の事情の二点で決まるように思えます。

しかし、実際はもっと複雑な「大人の事情」があるようです。

弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」

参考までに。
元検弁護士のつぶやき 無資格助産事件、院長ら不起訴へ

元検弁護士のつぶやき 大淀病院問題、奈良県警が立件見送り



昔、ワタクシも、とある刑事事件で取り調べを受けた事があります。

でも、刑事さんは、本来的には加害者であり、被疑者であるワタクシを丸で「被害者」として扱い、被害者たる相手方を「加害者」扱いして、本当に便宜を図ってくれました。

よくよく聞けば、彼らは毎日本当の悪党と戦っているので、ワタクシなどは善良な市民にしか見えないようでした(涙)。

後学の為にと、色々な現場のお話をして下さるというサービスぶり(笑)。

ところが。
ワタクシの方が、彼らから質問されてしまいました。

曰く。
「どうして検事さんは、『もっと証拠を固めろ!』で言うんですかねぇ?」

何でも、彼らはそれ相当のレベルの犯罪を扱う捜査官ではあるんですけど、集めた証拠を示しても「これでは不十分だし不起訴(※おそらく起訴猶予だろう)にするよ」と言われてとにかく証拠固めを言われる、との事でした。

ワタクシは、思わず、「公判維持に確実を期したいのかもしれませんね」と言いました。

刑事さんの顔がパッと変わり、「そうそう!そうなんですよ!すぐに『公判維持が…』って言うんですよ!」と言われてしまった。

ワタクシは、刑事事件には関係ない世界なので(告訴・告発・被害届けは別)、現場のことは分からないですが、ワタクシの知り合いの捜査機関関係者の言葉を借りれば、重大犯罪であればあるほど証拠の重みは増すのに、その重大さに反比例して証拠が得られにくくなるものなのだそうです。

状況から見ても行動から見ても「コイツ以外犯人はいない!」という場合が、どれだけ多い事か…と、ここでは語れない事件の話を聞きながら、いつもそう言われます。

ワタクシは、周りにいる人間に恵まれているのでしょう。
冤罪とは縁遠い関係者ばかりに巡り合っているんだと思うんです。

彼らは、そういう時には悔しくても捕まえないんです。

世の中では、こんないい加減な証拠で有罪?!と思われる世界も、一つ別の札を裏返せば、証拠という立証方法の壁によって眠る巨悪がいるという現実を知らない人たちが多い…

薬物犯の現実など、ちょっと知っただけでも、本当に恐ろしいし腐ったヤツラが多いのです。

その現実を少しでも知れば、ワタクシは、まだ捜査機関の人たちを最後まで信じたいと思っています。


今回の処分の話を拝見しながら、起訴猶予とは?不起訴とは?起訴の分水嶺は?と考えてしまいましたね。



※捜査機関を信じたい…とは書いたが、勿論、許せん腐った警官も知っている(汗)。沖縄の暴力団に脅され、大阪まで逃げてきた人(勿論堅気の人)が、ワタクシの知り合いの弁護士さんに助けを求めてきた。その先生は、大阪府警に告訴しようとしたが、何と!捜査の係の者は、「沖縄の事件なんだから、本人連れて沖縄に行けよ!」という実にぞんざいでえらそうな態度で一点張りをした上で、受理を数度に渡って拒否したのだ!そもそも命の危険があるから、ほんの少しの伝手を頼りに大阪に逃げたのではないか!先生はプツーン~…となってしまい、法務省・検察庁・警察庁・府警本部全てに内容証明郵便で上申書をその警察官の名指しで送りつけた。その効果はテキメンで、すぐさま、事情を聞き告訴を受けに事務所に来る、とその刑事が丁重に連絡して来た。来る時刻を聞き、彼が来る時刻の前には『検察』に告訴手続を完了するという嫌味を行ったのは言うまでも無い(笑)。刑事の面目は、完全に丸潰れ。その上、法務省も警察庁も府警本部も最も忌み嫌う「告訴拒否」という大失態をやらかしていたのが明るみに出てしまった。彼は、その後の捜査では、二度と顔を合わさず、所属場所のどこにも存在を確認できなくなったというから、何をかいわんや、である(嘲笑)。上級官庁に上申するというこの手は、実は、法務局の登記官と税務署の税務官以外の公務員を苛めるやり方なので、皆さんも使ってみてほしい。かなり効き目がある事は、他の事例でも確認しているからね(笑)。ところで、検察官と聞いてキムタクを思い浮かべる人も多いだろうが、あのドラマは、実に変。彼は、捜査も公訴提起も公判も全てやっていた。そんなバカな話は無い。大きな検察であれば、間違いなく全て分業制である。東京地検や横浜地検なら、間違いなく取り調べも公判も違う検察官がやっている筈だ。でなければ、身が持たない(汗)。ちなみに、これは、裁判官もそうだから。映画やドラマは、そういう世界を身近に感じさせてくれる一方、とんでもない勘違いをさせてしまうという弊害もあるのかな。まあ「あぶデカ」も、ましてや「西部警察」も、とんでもない世界なのだが(笑)。

by uneyama_shachyuu | 2007-02-02 22:52 | 時事