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一つの判決の結果。

いやいや、本当にお久しぶりになってしまいました。

今、様々な事が静かに進行中で、見守りつつ、進めているところです。





さて。
以下のような記事が載り、業界で波紋を呼んでいるようです。


クレディア倒産:社長「過払い金で破たん」 地元4行で借り入れ90億円 /静岡
9月16日12時0分配信 毎日新聞


 民事再生法適用を申し立てた消費者金融準大手「クレディア」(静岡市駿河区)の石尾頼央社長は14日夜、静岡市役所で記者会見した。石尾社長は「過払い金で経営の先行きが不透明になった」と述べ、利息制限法を超える過払い金の返還を求める動きの広がりが経営破たんの原因だと説明した。
 また、金融機関からの借入金510億円のうち、地元金融機関4行からの分は約90億円に上ることを明らかにした。
 同社の説明によると、大手消費者金融に対する集団提訴などの影響で、同社に対しても昨年春以降、過払い金の返還請求が急増。資本増強を図ろうと昨年夏以降、提携先を探したという。だが、過払い金問題は広がる一方で交渉先の企業も同社の価値を評価するのが難しく、提携に二の足を踏んだようだ。
 石尾社長は「不動産や保証業務など消費者金融以外のノウハウについては高い評価を得ている」と話し、今後策定する再生計画で債務整理を図り、強みを生かして支援先を広く探していく考えを示した。石尾社長は支援先が決まった段階で退任する意向だ。
 県内金融機関からの借入金は静岡銀行50億円▽清水銀行23億円▽静岡中央銀行14億円▽スルガ銀行3億円。19、20日に静岡市内で債権者説明会を開く。【鈴木直】

9月16日朝刊

最終更新:9月16日12時0分



…とここまで読んで頂いて、皆さんは、どのようなご感想をお持ちなのでしょうか?

「あ、潰れたのね」という方もいらっしゃるでしょう。
また、「へぇぇぇ」と思われる方も、いらっしゃることと思います。

しかし、多分、金融・法律の業界関係者は、

「ついに始まったか!」

という感想ではないでしょうか?



去年の1月(13日)、ある最高裁判決が出ました。

この判決を理解するのには、いわゆるグレーゾーン金利というものを理解しないといけないと思います。

一つの判決の結果。_d0039219_14452187.gif


↑これは、ワタクシのサイトで使っている簡単な略図です。
言葉の説明がめんどくさいので載せました(笑)。

この図に言うグレーゾーン金利は、利息制限法では違法だけれども、出資法(一般に関係あるのは貸金業の金利規制と考えて一応OK)では罰則が無い部分です。

そして、もう一つ、貸金業規制法(以下『法』)による「みなし弁済」規定(契約者が真に合意しているのであれば、出資法の金利でも弁済は有効)とセットで知る必要があります。

本来、原則として、利息制限法以上の金利は違法であることをまず了解していただく事になります。

しかし、出資法の範囲内では、罰則規定がありません。

しかも、貸金業規制法のみなし弁済規定によって、この金利で借りて返すことを合意しているということで、出資法の金利でも合法と、消費者金融やクレジット会社のキャッシング契約では主張されてきました。


まず、利息制限法に関しては、この範囲を超える金利の支払は、全て債務の元本(元金)返済に組み入れるというかなり前からの判例があります。


そして、昨年の判決です。
内容については、今回は、誤解を恐れず、少し正確性を欠く事を避けずに、要点のみを書いてみますが、大体、以下のようになります。

①みなし弁済規定の合意内容を記した領収書など(支払を証明する受取証書等)を相手に交付する義務(法18条)は、貸金業者の適正な運営・貸金需要者(※借り手)の保護を趣旨とするものであるから、その解釈は厳格にすべきで、その委任規定である内閣府令・法施行規則は、委任範囲を逸脱する違法がある。

今までの領収書などは、「一応」、法律とその下の法令に則って作られたものだけれども、そもそも従っている法令は、法律の委任できる範囲(※立法府である国会が決めるべき事だが、現場を知っている省庁にその下の法令を作らせて運用を任せても良い範囲)を超え、法(18条)の趣旨をないがしろにした法令違反があるので無効という理屈かな?

つまり、支払のたんびに、みなし弁済の合意を法律どおり書いてある領収書を一々作成せんと、そもそも無効なんですと真っ先に言われているのですわ。

次に、②みなし弁済規定は、貸金業者の適正な運営・貸金需要者(※借り手)の保護の趣旨から、極めて厳格に解釈せねばならない。みなし弁済は、出資法の金利で借りることについて、真に合意しており、かつ、法18条の書面(合意内容を書いてある領収書など)を弁済の都度交付したときで、かつ本当に任意・自由な意思で支払ったときに限って有効とするものである。そして、期限の利益逸失規定(※ある程度の機会・期間に返さない事情があったら、残り全額を請求できる規定)を契約書において支払いを求める場合、利息制限法以上の金利の支払いをしなければならないとの誤解を与え、みなし弁済の趣旨に反しているので、利息制限法内の金利についてのみ有効であると解される。本件の場合、この規定について、「利息制限法内の規定である」と誤解なく理解していたような事実でない限り、『事実上にせよ強制がある』場合にあたり、自由な意思に基づいて支払ったとはいえない。


…かなりまとめたつもりなんですけど(汗)、分かりにくい理屈だねぇ。

つまり、①②は、こういうことです。

出資法の高い金利(サラ金の金利)での契約は、契約当事者が真に合意していて、法律に定める内容を書いた領収書などを一々支払のたびに借り手に渡し、そして、「本当の意味で自由な意志に基づいて」支払った場合に限って有効ととすること。

期限の利益逸失規定については、利息制限法の範囲内に限り有効で、「サラ金の金利で支払わないと、とんでもない額を『一括で返せ!』と言われる!」と強制するような「誤解」を与えていないという場合でなければならない。

以上の二点を満たさないと、「事実上、出資法の金利での支払いを強制する契約書」だと決め付けて、みなし弁済は認めん!と宣言したのです。



金融業者の狼狽は、想像に難くない。

「ありえねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

…というのが、本当のところではないでしょうか?

というのも、大体の人が見れば、「こんなん絶対ありえへんもん!」というものなんですね。

サラ金としては、最高裁に、「利息制限法で営業せいっ!」と一喝されているようなものです。

また、政府に対しても、「いつまでこんなん保護するつもりなんぢゃ?!」と喧嘩を売っているようなもの。



サラ金側は、TV宣伝を始めました。
そして、様々なメディアで、声高に脅し始めました。

曰く。
「簡単に貸せなくなりますから、そのおつもりで。『何よりもお客様のために』。」(事業の資金でも貸したらへんからなっ!潰れろや!)

アイフルなどは典型。
アイフル
ちなみに、アコムに出演中の木内晶子さんは、デビューからのファンだったりするので、「アコムなら借りようか?!」という不純な動機も持ちつつ(笑)。
アコムCM

ワタクシは、これを聞いて「バカバカしい」と思いました。

確かに、最初は、場合によっては数年は貸し渋りが出てくるでしょう。
しかし、その後、どうなるのか?

全社一斉に利息制限法以内で貸し始めるんですよ?
ヤミ金に落ちない限り。
特に、上場企業は、全てそうでしょう。

すると、どうなるか?

今までと同じような貸し込み競争が始まるんです。

バブルの銀行と同じように、「借りて下さいよお!」となる。

その証拠に、信用情報の扱いが変わるそうです。

つまり、今までは、何らかの債務整理を行えば、「債務整理」という「事故情報」を載せていました。

ところが、9月の始めから、扱いが変わったらしい。

それまでも、過払い金については、完済扱いが行われるケースが多くなっていましたが、単に任意整理で支払契約の中身を替えても、契約変更という情報に換えるだけになっているそうです。

これは、つまり、出資法の金利を基礎に事故情報を作っていたら、みんな信用がなくなってしまい、借り手がいなくなったからということではないでしょうか?

利息制限法引き直しの事例が余りにも多くなり、全部「事故」にしてしまったら、今までどおりの基準では貸せなくなってしまう。

しかし、考え方を変えると、実はおいしい話でもありうる。
なぜなら、過払いが出ていたり、支払方法を利息制限法で引き直して変える人は、実は、借りたお金を真面目にきちんと返す人に他ならないのです。

どうせ利息制限法内で貸すのであれば、こういう人たちに戻ってきてもらいたい。

そのためには、事故扱いなどアホらしくなったのではないでしょうか?



また、業界が成熟し、消費者目当てでの貸し込みから変わっていく面も出てくるでしょう。

実は、それが、サブプライムローンなんです。



ローンですから、何らかのものを借金して買う契約なわけですが、その中でも、信頼度が低いものを指していうものです。

※信用が高い市民層を「プライム層」と呼ぶ。その「下」、つまり信用度が落ちるということで『サブ』プライム層と呼ばれる市民層のためのローン、という意味から出発している。

金利は、最初の数年だけは安く、その後は契約どおりの高い金利を払わなければならない、というのが一般的です。

これは、特にアメリカで始まったものですから、日本には関係ないや…と思われるのは、ちょっとだけお待ち下さい。

日本でも、外資は始めようとしていました。
GEコンシューマ・ファイナンスなどが提供している商品が、典型的です。
GE money

なぜ、外資が狙うのか?

一つは、これから不動産価格が上昇する可能性を強く秘めているから。

二つ目には、実は、日本は、これだけ不況と言いつつも、それでも貯蓄を少しずつでも行う民族性があるから。

簡単に言えば、借金をする率が、他国と比べて極端に少ないからなのです。

米国以外でも変調の兆しが見える住宅価格-サブプライムローン問題で問い直される価格上昇の持続可能性


今までの消費者金融の融資は、単に短期無担保融資にほぼ限られていました(アイフルを除く)。

しかし、既に銀行などは、アメリカのサブプライムローンの担保価値の残りを使ったホームエクイティローンを狙い、商品化しつつあります。

短期無担保融資も、消費者金融よりも下げる銀行が出てきました(三井住友)。

消費者金融を多額の金で買収したのに、この最高裁の判決からコンプライアンス問題が噴出し、赤字を拡大させているから、ではないでしょうか?

事実、GEコンシューマは、買ったはいいけれど、ただ単に過払い金で大損こいたほのぼのレイクを売却して消費者金融から撤退するそうです。



※やれやれ、ヤンキーの国は、ワタクシたち日本人には、全くと言っていいほど、理解出来ない国だと再認識させられたのが、この「ホームエクイティローン」ではないだろうか?つまり、これは、「住宅価格が上昇しているんだから、当たり前だが担保価値も上がっている。だから、住宅ローン以上の担保価値にもローンをつけて借りられたら、もっとモノが買えるじゃないか!」という発想である。2年前の秋ごろか、これを聞いたときには、「既に気が狂ったのではないか?」とワタクシなどには思えた。日本のバブルを冷ややかに見詰め、未だにバカにしているアメリカがこの体たらくである。しかも、サブプライムローンは、本当の目的は、高金利で借りてもらったら、後はその債権を証券化してリスクを他人に擦り付ける点にある。迷惑は他人に、利益は自分に、である。しかし、世の中は、そう甘くはない。この信用収縮は、結局アメリカの信用そのものを崩しにかかる。これで、アメリカの証券化した商品には、既に不信が寄せられ始めているからだ(格付け会社がその例)。さて、こんなローンを思いつくおバカさん加減は、一体どこから生まれるのだろうか?実は、これも簡単。「貧富の差が激しいから」。これが本当の理由である。アメリカは、物価が安い、というイメージがあるが、それは、確かに品目ごとに見ればそれなりに安いと言えるのだが、実は、生活実感からして、それほど安いともいえないようだ。確実に安いといえるのは、せいぜい牛肉とエビとガソリンとコーラとビールだけ、というのが、アメリカ(ワシントンDC)在住の友人の正直な感想である。しかし、アメリカの収入層の実態は、四割もの人が年収250万円前後なのである。つまり、常識的に考えて、住宅などは望めなかった。その上、つい先年まで、アメリカの住宅の価格は、景気拡大のせいで上昇し続けていた。これは、何を言いたいかと言えば、賃貸料も上昇しているということなのだ。だから、豊かではなくても暮らせるという給与があっても、住宅が借りられず、政府が用意したキャンプで暮らす、などというバカバカしいことまで起きている地区もあったようだ(最初はシリコンバレーだった)。それに比べて、サブプライムローンの価格では、それまでの家賃よりも、当初金利を抑えている数年の支払の方が安い場合まであったらしく、しかも、ホームエクイティローンまで使って豊かに買い物ができ、その魅力は抗しがたいものがあったのではないか。金利上昇の月が来そうなら、家を売り払って買い替え、またまた安い時期のサブプライムローンを使う、という手が横行していたと聞く。さらに、サブプライムローンは、不動産融資で銀行の融資枠を一杯一杯まで使っている人が、これを使ってまたまた不動産投資をしていくのにも多数使われていた。日本のバブル期の自動車売買や不動産投資に近い形ではないか。本当におバカさんとしか言いようがない。ところで、日本にも影響があるか?といえば、必ずある、と言える。厚生年金は、一体どこに投資しているのか?答えは、ヘッジファンドである。このヘッジファンドは、サブプライム債とエクイティ債を多数組み込んだ証券に投資し、今年、その失敗が取り沙汰され、ヘッジファンドの信用不安が拡大している。正に愚か者である。ちなみに、日本から投資している企業年金は、まだはっきりとは分からないが、兆単位と聞いている。


さてさて。
この判決は、実に様々なところに波及していくのも間違い無さそう。

消費者金融は、13000社ほどあるそうです。

しかし、これから数年で、おそらく3000社を切るとも言われています。


さてさて、どうなることやら。

まだまだこの情勢を見守りつつ、勝負していかなければ。

by uneyama_shachyuu | 2007-09-23 10:59 | 時事